「primeNumber DATA SUMMIT 2025」では、RevOpsの最前線に立つ株式会社ZAICO マーケティング&PR部 部長の川島沙絵氏、株式会社ヌーラボ 取締役の小島英揮氏、株式会社primeNumber 執行役員マーケティング本部VPの濱本秋紀が登壇。

AIエージェント活用によるRevOpsの「行動変容」と、その先に見えるレベニュー組織の進化について語り合いました。

登壇者情報

川島 沙絵氏

株式会社ZAICO マーケティング & PR部 部長
京都大学卒業後、インターネット広告代理店に入社。以後、複数の企業でマーケティング職を務め、2025年1月より株式会社ZAICOにマーケティング & PR部 部長として参画。

小島 英揮氏

株式会社ヌーラボ取締役CRO / 株式会社primeNumber社外取締役 / コミュニティマーケティング推進協会代表理事

ITを中心に30年以上のマーケティングキャリアを持つ。PFUやアドビを経て、2009~2016年にAWSで日本のマーケティングを統括、日本最大のクラウドコミュニティ:JAWS-UGを立ち上げ。2017年より複数の事業を支援するパラレルマーケターとして活動。2024年2月に一般社団法人コミュニティマーケティング推進協会 代表理事、2024年6月に株式会社ヌーラボで、取締役CROに就任。


濱本 秋紀

株式会社primeNumber執行役員 マーケティング本部 VP

2024年4月まで外資系IT企業のSAPジャパンにてコーポレートイベント・ブランディング・スポーツマーケティングなどの責任者、プロダクトマーケティング、ユーザー会の立ち上げなどを担当。在職中にJリーグに出向し、デジタルマーケティング人材育成講座の座長、顧客・市場調査、統合マーケティング推進などを担当。2024年5月よりprimeNumberに入社しマーケティングを管掌。

The Modelで深まる3つの溝。人手による解決は限界を迎えた

多くのBtoBスタートアップ企業・スケールアップ企業では、新規顧客獲得のためにThe Model式の営業スタイルを採用しています。primeNumber 執行役員 マーケティング本部 VP 濱本秋紀は、この組織体制に対し、RevOpsの観点で問題提起をしました。

「The Modelは、マーケティング→IS(インサイドセールス)→FS(フィールドセールス)→CS(カスタマーサクセス)のプロセスで受注を目指します。このプロセスにおいて、ボトルネックを特定して改善サイクルを回すことも、収益の最大化のためにレベニュー組織に課せられた課題です。しかし実際には、それぞれのプロセス間で『データの溝』『オペレーションの溝』『KPIの溝』が存在し、もはや人手での改善は限界ではないか?というのが本セッションでの問題提起です」(濱本)

例えば、マーケティングがMarketing Qualified Leadと判断してインサイドセールスにつなげても、商談に至らずに「リードの質が悪かった」と言われることがあります。受注に至るまでの各プロセスの転換率が低いと、CPA(リード獲得コスト)が高くなります。マーケティング部門は提供したリードから本当に受注が生まれたかどうかがわからない、などの問題が起こるということです。

次に濱本は、ZAICOマーケティング&PR部部長  川島沙絵氏に対し、同社で実際に起きているマーケティングとセールス部門の間にある「連携の課題」について質問しました。

川島氏は「大きく3つの課題がある」と応えます。

「1つ目は、お互いに同じSFAのデータベースを見ているはずなのに、部門・チーム・個人それぞれの単位で数字の認識が合わず、会話が噛み合わないことです。その原因として、最新データに更新されていなかったり、古いデータが残ってしまっていたりということが挙げられます。

2つ目はKPIの溝と関連します。マーケティングからの視点と、IS・FSからの視点では、同じ数字を見ていても解釈が異なる場合があるのです。例えばマーケティングチームとしては、今月はリードの量・質ともに良く、手応えを感じているとします。しかし、営業側から見ると、『直近で受注できた案件があまりない(=リードが合っていない)』といった意見が出る場合があります。

3つ目は、情報伝達の粒度・頻度が個人スキルに依存してしまうことです。例えばセールスから「このコンテンツを見て顧客と話が弾んだ」といったことを共有してもらうことがあります。しかし、こういったマーケチームにとってのありがたい行動はセールスメンバーの個人のスキル・スタンスによって依存してしまいます」(川島氏)

RevOpsにおいて、数字は「確認」だけではなく「使い方」が重要

話題は、ヌーラボ 取締役の小島氏の活動内容に移りました。同氏は、コミュニティマーケティング推進協会代表理事と株式会社primeNumber社外取締役も務めています。

「ヌーラボでビジネス部門を管掌することになったとき、The Modelを構成するチーム、Web・PR・カスタマーサポートによるカスタマーコミュニケーションのチーム、加えてレベニューオペレーション(RevOps)チームを新設しました。RevOpsチームは元々、販売管理で数字を管理しているメンバーで組成しています。その際に重視したのは、RevOpsでは数字が合うのは大前提とした上で、収益を上げ続けるために数字を活用するという共通認識を持つことです」(小島氏)

「ビジネスには鳥の目・虫の目・魚の目という言葉があります。鳥の目で俯瞰して、大局を把握する。異変や特異点があったときに、虫の目で細部を見る。ゴールへの乖離や異変が続く場合は、魚の目を持って一時的なのか、潮目が変わっているのかの流れを判断する。「このような変化を、数字を見てわかるようにすることが、RevOpsには不可欠です」と小島氏は語ります。

「データ基盤をつくる目的はチームごとに異なるので、データの前提や粒度を共通化するためにTROCCOやSnowflakeを使いながら組織運営しています。そうすることで部門間の溝もなくなります」(小島氏)

AIエージェントの提案が組織の「行動変容」を加速させる

話題は本イベント主題のAIエージェントへ。「データプラットフォームと統合することで自社のデータが見えるようになり、ボトルネックの箇所も解明できるようになりました。しかし、今直面している課題は、ボトルネックに対しての解決です」と、小島氏はまず、現状の課題について語りました。

「データを見ることで課題への解決方法が分かるか、課題に対してどうアクションするかは、人やチームによってばらつきがあります。さらにアクションに辿り着くまでに膨大な時間を要します。しかしAIエージェントから、例えばデータを根拠にした解決策の提案があれば、アクションまでの時間を短縮できて行動変容も起こしやすくなります」(小島氏)

またRevOps観点でのAIエージェントについて、川島氏は期待している点を語りました。

「手作業で紐づけ、削除しているようなデータの精度向上に向けた作業はすぐに対応できるのではないかと思っています。さらにAIエージェントであればフラットな視点で適切なフィードバックをしてくれることに期待していきたいです」(川島氏)

『primeBusinessAgent』で解決を図ったZAICOのマーケティング課題

primeNumberでは、イベント同日に意思決定支援型AI『primeBusinessAgent』を提供開始しました。

「同ツールを利用することで、川島氏・小島氏のおっしゃるようなAIエージェントへの期待に応えることができる」と濱本は話します。

実は同ツールの提供開始前に、ZAICOにてPoCを実施。ここからは、川島氏からPoCの結果について共有がありました。

「ZAICOでは、広告やセミナーなどのマーケティング施策が、『売上貢献につながっているかが見えづらい』という課題がありました。この課題に対して、primeBusinessAgentを先行導入させていただき、結果として、人手を介さないAIエージェントの力を確認できました」(川島氏)

同ツールの具体的な活用方法や効果について、川島氏は話を続けます。同社では複数のテーマやターゲットセグメントに合わせてセミナーを実施。それぞれのセミナーにおいて、ねらい通りに受注獲得できているかを確認するため、セミナー参加人数、セミナーでのリード獲得→商談→受注それぞれのステータスや推移率などを、同ツールを用いて一覧化しました。

「複数のターゲットセグメントに対し、セミナーを実施しています。以前はスプレッドシートで日々更新・管理していましたが、『primeBusinessAgent』の導入後は、わずか数日で一元化したデータが見られるようになり、非常に作業が効率化されました」(川島氏)

受注した案件に対して、どのようなお客様へどこが刺さったのかを閲覧することもできます。集客コストに対して単価、獲得コストがどれくらいだったかを見ることができます。

「施策が受注につながっていることを確認できることで、マーケティング担当のモチベーションも上がります。効果があったポイントを可視化し、次のアクションを取りやすくなるので、行動変容という面でもとても価値があります」(川島氏)

セミナーを導線にして受注したときの顧客単価や、受注に至るまでの獲得コストも見られるようになり、顧客特性や効果的な訴求ポイントがわかるようになったと、川島氏は評価しました。

同ツールは2025年12月時点で、営業チーム向けの『primeSalesAgent』とマーケティングチーム向けの『primeMarketingAgent』の2種類のプロダクトが内包されています。「2軸で確認できることで、商談内容や効果的な訴求ポイントが、マーケティング側でもシームレスに確認できるようになりました」と川島氏は続けます。

「primeSalesAgentを活用することで、マーケティング施策からのリード→商談→受注、の一連のストーリーを、定性・定量の両面から確認できるようになると考えています。過去は口頭でフィードバックをもらっていたところをエージェントから自動で取得できるようになり、マーケティング側の企画にも活かせるようになります」(川島氏)

商談だけでなく架電についても定量的に見ることができるため、マーケティング施策がきちんとお客様の価値訴求できているのか、人手を介さずに把握することができるようになりました。

小島氏は川島氏の発表に対して、「AIエージェントであれば、心理的に営業のなかでも聞きやすい人に聞いてしまうという偏ったヒアリング内容から、すべての顧客との商談情報を聞きたい時に聞けて、客観的な視点でサマライズしてくれることも、行動変容につながる大きな要因だと思いました」とAIエージェント活用によるメリットに言及。さらに情報の透明性が上がることで、それぞれが責任感をもって進められることにつながるのではないかと感じられています。さらに濱本も付け加えます。

「マーケティングとセールスの間で話し合い、お互いの認知の溝を埋めていくことは難易度が高いものです。そこにAIエージェントを活用することで、一定の基準に基づいた数字をレベニュー組織全体で把握することができます」(濱本)

AIエージェントは「優秀なサポーター」として、ヒトの合意形成を支える

AIエージェントの活用により今後目指したい姿について、濱本は川島氏に尋ねました。

「レベニュー組織をつくっていくにあたって、今以上にマーケティング・IS・FS・CSそれぞれの、健全なフィードバックループをつくる必要があると思っています。しかし、人手だけでは難しいため、データ精度向上やフラットなフィードバック、人からでは得にくい示唆、傾向分析などをAI エージェントに手助けしてもらいつつ、組織強化・事業成長をしていく。そのような姿を目指していきたいです」(川島氏)

もし今後、AIエージェントがオペレーションだけではなく、ヒトよりも優秀な意思決定もしてくれるとしたら、マーケッターのコア業務はどのように変化していくとよいかと濱本が問いました。

「単純に手を動かすのではなく、企画やディレクションなどのクリエイティブな面で、成果にコミットできるかが、非常に重要だと思います。例えば、異なるミーティング間の情報を創造的につなぎ合わせて、何かしらの新しい企画や、意思を持ったディレクションをしていくことが考えられます。すでにそうなり始めていることを、ここ数カ月で感じています」(川島氏)

セッションの最後に、コミュニティの側面から見た、AI エージェント時代における「ヒトにしか出せない価値」について小島氏が語り、セッションを締めくくりました。

「最終的には、『合意形成』や『ブランド創造』が、人間同士が関わることによる価値だと思っています。特にBtoBビジネスは、顧客課題に対してソリューションによる解決を図る、という合意形成で成り立っています。提案・導入・運用のそれぞれのフェーズで、自社・顧客以外にもたくさんのステークホルダーが存在します。それらのステークホルダーとの合意形成にもっと力をかけることは、人間にしかできないことではないでしょうか。AIエージェントはヒトが合意形成しやすい世界にするための、力強いサポーターになると考えています」(小島氏)

人の行動変容を促すのか、合意形成を進めるかという点で、より早くAIを使いこなすことで指数計算的に成長できる可能性を秘めています。

皆さんの意思決定を加速する「primeBusinessAgent」が気になった方は、ぜひお問い合わせください。

北川佳奈

TROCCO®ブログの記事ライター